200人の会場で、ライブキャプションは使えなかった。iPhoneの文字起こしを「要点」に変える2つの入口
会議の内容が、その場では追えていても、終わったあとに残らない。
メモを取ろうとすると話を聞き逃し、話を聞こうとするとメモが残らない。この両立は、気合いでは解決しませんでした。
そこで先週、「その場では聞くことに集中し、記録は機械に任せる」という仕組みを作りました。そして昨日、初めて実戦で使いました。200人規模の社内行事、2時間半。
結果から言うと、最初に想定していた道具は使えませんでした。
作ったもの
iPhone で文字になったものをコピー
↓ 貼るだけ
Obsidian の受付フォルダ
↓ Claude Code に「整理して」と頼む
要点/決まったこと/やること(期限つき)/原文
人間がやるのはコピーして貼るところまでです。
想定が外れたところ
設計したときは、iPhone の「ライブキャプション」を使うつもりでした。聞こえている音声をその場で文字にしてくれる機能で、最大1時間分をさかのぼってコピーできます。
ところが、当日の行事は14:30〜17:00。2時間半ありました。
1時間しか残らない道具では、最初の1時間半が消えます。開会のスピーチも、そこで語られた創業の話も、全部です。
そこで、その場でボイスメモの「文字起こしをコピー」に切り替えました。録音した音声から文字起こしを取り出し、そのままコピーできる機能です。
2つの入口を、場面で使い分ける
この1回で、道具は1つではないと分かりました。いまはこう整理しています。
| 方法 | 向いている場面 | 制約 |
|---|---|---|
| ライブキャプション | その場で読みたいとき。短い打ち合わせ、電話、窓口 | さかのぼれるのは最大1時間。録音は残らない |
| ボイスメモの文字起こしをコピー | 長い行事、講演、2時間を超える会議 | 録音が残るため、外部に出すときは配慮が要る。騒がしい会場では誤変換が増える |
運用ルールにも、どちらを使ったか記録の冒頭に必ず書くという項目を足しました。あとから精度の違いを判断できるようにするためです。
書き起こしは、誤変換だらけでした
正直に書きます。出てきた文字起こしは、かなりひどいものでした。
たとえば冒頭の避難案内。本当は「おかしも(押さない・駆けない・しゃべらない・戻らない)」という合言葉を説明していたはずの箇所が、こうなっていました。
おしもの約束です。僕が知らないそべらない戻らない
200人の会場、マイク越し、日本語と英語が混ざるスピーチ。条件としては最悪の部類です。
それでも、要点は取り出せました。
要点が取り出せた理由
ルールを先に決めてあったからです。運用ルールは CLAUDE.md というファイルに書いてあるので、毎回説明する必要がありません。
- 受付フォルダのノートを読み、
YYYY/MM/YYYY-MM-DD_HHmm_場面.mdへ移動・改名する - 先頭に「要点(3行以内)/決まったこと/自分がやること(期限)/あとで確認すること」を書く
- 原文は一字も変えずに残す(誤変換も直さない)
- 誤変換と思われる箇所は、要点側で「推測:〜の誤変換か」と補足する
- 発言者は原文から分かる範囲で書く。分からなければ書かない(推測で人に発言を割り当てない)
- 「自分がやること」は、その日の日次ノートにも追記する
とくに効いたのが、原文を消さないことと事実と推測を分けることでした。
誤変換した原文が残っているから、「おしもの約束」を見て「おかしもの誤変換だろう」と推測できる。そして推測だと明記してあるから、あとで読み返したときに判断を誤らない。
要約だけ残していたら、意味の通らない一文が事実として居座っていたはずです。
できあがったもの
## 要点(3行以内)
- 14:30–17:00、約200名弱が参加
- 創業者のスピーチ(創業年、社員とともに歩んだ歴史)と、社長の閉会挨拶
- 閉会挨拶で、予算の都合により社内の手作りで開催したことが明かされた
## 自分がやること(期限)
- [ ] 画像使用同意書(本年分)を提出済みか確認する
## あとで確認すること
- 推測:「おしもの約束」は避難の合言葉「おかしも」の誤変換か
## 原文
(文字起こしをそのまま。一字も変えていない)
記録に残っていた、ひとつの言葉
その日、私は英語がうまく話せませんでした。海外拠点の方と話す機会があったのに、言葉が出てこなかった。その日の入力ノートには、悔しさとしてそう書いています。
ところが、整理した記録の雑談部分に、こんな一節が残っていました。原文のまま載せます。
僕は英語が苦手だから発音が上手できないからってことなくていいんじゃないかな
大事なのは話したいなと思ってると思ってないから
誰もの場合って誰にも負けないものを持ってる方からいいじゃない
誤変換も、句読点の乱れもそのままです。それでも、言いたいことは伝わります。
これは、私が尊敬している人の言葉でした。その場では、話せなかった悔しさのほうが大きくて、受け取りきれていませんでした。
記録がなければ、悔しさだけが残っていたはずです。
文字起こしは、聞き逃しを補うための道具だと思っていました。でも実際に効いたのは、その場では処理しきれなかったものを、あとから受け取り直せることでした。
続けるために削ったこと
この仕組みで効いたのは、機能を足したことではなく、人間の手順を1つに減らしたことです。
- その場で整えない(貼るだけ)
- ファイル名を決めない(あとで機械が付ける)
- 要約しようとしない(頼むだけ)
やることが3つあると続きませんが、1つなら続きます。
いまの状態(2026-10-09)
- できていること:仕組みを作り、長時間の行事で1回実戦投入した
- まだできていないこと:定例会議や1on1など、日常の場面では使っていない。ライブキャプション側は未検証
- 次に試すこと:次の1on1で短い場面に使い、ライブキャプションの精度を確かめる
うまくいったことだけ書いても役に立たないので、このまま残しておきます。
まとめ
- 文字起こしの入口は2つある。長い行事はボイスメモ、短い対面はライブキャプション
- 騒がしい会場では誤変換が大量に出る。それでも要点は取り出せる
- 鍵は、原文を消さないことと事実と推測を分けること
- 人間の手順は1つまで。増やすと続かない
聞き取りに不安がある人にとって、これは「便利な効率化」ではなく、仕事を続けるための杖です。同じ必要がある方の参考になればと思います。